2016年6月24日金曜日

石原ビルディング(旧中央ビルディング)

淀屋橋で働く人なら誰もが目にしているはずなのに、屋上や壁の大看板が目に付くからか、あるいはショーケースに並ぶ高価な輸入時計に目が奪われるのか、そのビルの良さに気づく人は意外と少ない。良く見るときちんと練られたバランスのよいデザインが分かるはずだ。1,2階は黒い意志張りでしっかりと固めておいて、その2階に淀屋橋の交差点を見下ろす横長の連続窓を穿つ。中間部は垂直線を強調するデザインで逆に軽快なリズムを生み出し、仕上げとして右肩にバランスよく四角いボックスを乗せる。よく見ればと乗りにもうひとつ、小さな四角のアクセントが効いている。オーナーの石原家は1846(弘化3)年に創業した老舗の輸入品店。輸入時計をはじめ多くの輸入品を取り扱ってきた筋金入りのハイカラだ。このビルを建てたのは現オーナーの祖父にあたる3代目石原政造氏。政造氏は建築にも関心が深く、自らビルのデザインにも関わった。ちなみに1915(大正4)年、心斎橋に立てられた石原と経典ビルは、日本におけるセセッション様式の代表作として教科書には必ずといってよいほど登場する(建物は現存せず)。現在、地下には「七色の珈琲」を出す名物喫茶店MJBが、8階の大ガラス部分には北浜画廊が入る。ここから眺める景色がすばらしい。70年近く、淀屋橋の移り変わりをずっと見つめてきた大窓だ。
所在地:大阪府大阪市中央区北浜4-1-1
建築年:1939(昭和14)年
構造・規模:鉄骨鉄筋コンクリート造9階建地下2階
設計:真水・三橋建築事務所



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