四天王寺を鎮守する七宮のうち、鬼門にあたる北東の守りとされたのが上之宮で、ここで仏事を行う僧の住む坊が春海庵、すなわち蔵鷺庵の前身です。春海庵は長い間無住寺になっていましたが、元禄4年(1691)、阿波の藩主蜂須賀の家臣稲田稙栄の奥方が開基となり、天桂傳尊禅師が曹洞宗の寺院として再興されました。蔵鷺庵には、全国にその名を知られる一人の人物が眠っています。名医として漢方医学や西洋医学に優れ、また日本で始めて本格的な白砂糖の製糖事業を始めた永富独嘯庵(どくしょうあん)です。1732年、現在の山口県下関に生まれた独嘯庵は、幼年期より神童として知られ、後に江戸へ出て儒学の他に医術を学びました。35年の短い生涯の間、江戸と長州を往来する際、何度か大坂に立ち寄りました。実は、独嘯庵と蔵鷺庵の関係について、詳しいことは分かっていません。しかし、没後かなりの時間が経って墓が建てられたことから、深い縁があったものと考えられます。墓石は長年の風雪に晒され表面が浸食されたため、平成4年に再建されました。その際、旧墓石は剥落部分が多かったため、旧拓本の写真を原寸大に拡大して、それをもとに忠実に模彫、複製され、旧墓石は現在の墓石の下に安置されました。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上之宮町4-33
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